CCDD’s diary

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実話。

イギリスのBBC ONE で放送されたドラマ Mrs. Wilson は主人公 Alison Wilson を演じる Ruth Wilson の おばぁちゃまの実話ってのが沁みる

夫が死んでから明かされる事実、次々と現れる妻②③、夫に対する疑惑不信感に悶え苦しみながら、どうしても真実を追求したい妻、確固たる姿勢、息子たちへの愛情と嘘と確執、神へ求める救済。そして決意を持って息子たちに事実を告げる時。長男はしっかり者で、次男坊は心温か。せめて息子たちにとっては理想の父であってほしいとどんなに願ったことか。

けど結局は亡き夫を取り巻く誰の言っていることが正しいのか、最後までわからず仕舞いで不完全燃焼。

ただ、ウィルソン夫人の中では恐らく最終決着が着く。

淡々とした流れで、ただ彼女の感情の揺れをひらすら描く映画。

きちんとしたスーツやカーディガンやホワイトグローブなんかをきりりと美しく着こなし身につけ、60sのロンドン西部や40sに遡り触れることができて、都市部の住宅や別荘や戦時中の病院や列車が垣間見れて満足。あーこの頃のこの国の人たちはこんな会話をこんな服装で交わし、こんな暮らしぶりだったのだなぁと。

あまりにも隠し事の多い、ホンマもんの嘘つき小説家なのか、戦争のトラウマに苦しむパセティックな退役軍人なのか、シークレットサービスの秘匿事項を墓まで持っていった冷静沈着な輩なのか、ダブルスパイなのか、女たちに都合のよい頼り方をしていただけなのか、彼女に惹かれていってそれでも任務のため偽の結婚生活を他でも続けなくてはならなかったのか、時代のせいなのか、夫の何が真実で何が嘘なのか、平和で愛されるべき妻が、失くしてから巨大な謎を抱えて生きていかねばならない葛藤ってのが、ミソ田楽じゃ。

けど、反対に思う。

この男はなぜこんなにも女性に対して誰ひとり芯からは心許さず、時代と対峙できたのだろうと、その意志の強さを思う反面、女性蔑視もいいとこじゃん、嘘で身を固め、皆を振り回しって憤りも。しかも顔がキライなタイプだし、なんでみんな騙されちゃうわけ?

今も明かされない真実なんて、胸くそわる。ザワザワする。

せめて集まった息子たち、孫たちひ孫たち、微笑んでるけど、母のこと祖母のこと曽祖母のこと思うなら、父のこと祖父のこと曽祖父のこと、もっと踏み込んで白日の下に晒せよって考えるけど、当人たちはもはや望んじゃいないのかもね。どう昇華したのかしらん。

極めて、謎。